昔お別れした彼を時々、はっきりと思い出したりしませんか?
音楽を聴いたとたん、あるいは懐かしい場所に行ったとたんなどに蘇ってくる感覚です。
「耳は目よりも記憶を宿す」ということが記憶力の研究分野で言われているそうです。
目で見た場所の記憶よりも、音楽で思い出すことが多いのはそのせいだと思います。
私もサザンオールスターズのある曲を聴くと、昔付き合っていた彼を思い出します。
車の中で聴いていたカセットから流れていたその曲が、今でも残っているのだと思います。
彼の声やイントネーションなども、近い人の声や話し方で蘇ったりすることがありますよね。
どんなに日常では忘れていても、人の記憶の引き出しが開くときがあるということでしょう。
景色についても、音ほどではありませんが記憶を思い起こすことがあります。
デジャブ(既視感)のような感覚に近いのですが、それと違うのは確かに経験した景色や場所であるということです。
「ここに誰かと来たな!あれ?あの時の彼と来たんだな」と徐々に思い出すこともあれば、その景色を見た瞬間に話した内容まで思い出すこともあります。
思い出したくないから、その曲は聴かないでいたり、その場所に行かないでいることもあるかもしれませんね。
私の場合ですが、彼も東京に住んでいてそこに思い出がありすぎたので、何を見ても思い出してしまい辛かったことがあります。
そして月日が経つにつれ、慣れてくることもあって辛さはなくなっていきます。
違う記憶が、その頃の記憶を塗り替えていくからです。
私たちは、記憶喪失という経験をすることがなければ、きっと記憶の引き出しの中身は老いてボケてしまっても何かの拍子に蘇ってくる可能性があるのだと思います。
寝たきりになった母が、大昔の思い出を急に語ったりしてとまどったことがありました。
痴ほうが出ていたのに、急に思い出すということがあるんですね。
どんな別れ方をしたとしても、思い出の中の彼や彼女の嫌な部分しか思い出せないということは稀だと思います。
音で言えばいつか聴いた波の音、汽笛の音、セミの声などで私は特定の時代の自分を思い出します。
景色で言えば大きな船のある港、新幹線が出ていくホーム、霜柱がたっている土などを見てると私は特定の時代の自分を思い出します。
ノスタルジーに浸れる引き金となる私の音や景色です。
そんな風に、どうせ忘れることが出来ないものなら、彼や彼女との良い思い出につながる音楽や景色は大切にしまっておきたいものですね。
そして悪い思い出の音や場所なら、違う思い出で塗り替えていけるよう避けずに聴いたり行ったりすると良いかもしれませんね。
脳の海馬に溜まった記憶の中から選ばれた音楽や場所なのですから・・